マジックの不思議なジレンマ
マジシャン業界には三年に一度、オリンピックのようなものがあります。
FISMと呼ばれる世界大会です。
毎年各国から素晴らしい技術と表現力や演出力を有したマジシャンが揃います。
革新的なアイデアのマジックやマジシャンが世界一を競って争います。
また、日本ではコンベンションと呼ばれる国内大会が存在します。
ぼくは参加したことが無いので何とも言えませんが、かなり歴史の古いコンベンションも存在するようです。
僕が言いたいのは、世界大会も含めこれらの大会では審査員が全員マジシャンであることです。
特に面白いのが『マジシャンがマジシャンを評価する』という部分です。
マジックの本質は『サプライズ』、つまり初見殺しです。
『相手が知らない』のを前提に行われるものですが、競うという性質上どうしてもそのマジックの良さや知識を有するマジシャンが評価せざるを得ません。
一般の方相手に行えば『好み』の問題になってくるので、その洗練された技術や表現方法は採点の中には含まれなくなってしまいます。
なので何をもって『凄い』のかを決めるときに、どうしてもマジシャン目線ですごいという評価になってしまいがちです。
本来なら観客に向かって行われるはずのマジックなので、観客目線で評価されるべきなのですがシステム上仕方がないことになっています。
では、現場でプロとして活躍されているマジシャンがコンベンションに出て素晴らしくないかというとそんなことは無いと思います。
普段観客目線で行われている思考プロセスや演技の表現をマジシャンに向けて行えばいいからです。
では、なぜ一線級のプロがコンベンションに参加しないのか。
それは、出場するメリットが少ないからです。
日本のお笑いの業界のように、Mー1などで優勝すれば賞金一千万円もらえたりその大会で優勝したときにスポンサーやテレビCMへの露出度が上がったりなどの特典が、マジックの大会はあまり魅力的ではないからです。
コンベンションにでるために、そのコンベンション用のアクトを作ったり構成や演出を練ったりしなくてはいけません。
さらに、観客や審査員は『マジシャン』です。
サプライズの様々な種類や手法を既に知り尽くしている相手に演技しなければなりません。
その状態はかなりハードルが高いです。
マジックやサプライズは、『相手の期待値を超えること』が前提です。
つまり、相手を真に驚かせようと楽しませようと思うなら一から生み出すレベルでマジックをクリエイトしなければなりません。
そこに膨大な時間と労力とお金と思考を費やすにはあまりにもメリットが少な過ぎるのです。。
マジック業界に浸かり、マジック業界に貢献すれば貢献するほど、リアルでの自分の食い扶持に費やす時間が減り目の前のお客様のために考える時間が失われていきます。
このマジックのジレンマは業界発展への妨げになっていると思います。
かと言って誰もコンベンションに参加しなければ『新たなマジック』は生み出される事もなく衰退してしまいます。
何が言いたいのかというと。
大事なことは、マジックを愛する一人一人がマジックをクリエイトする思考は常に保ちつつ(マジシャン相手でも期待値を超えること)、目の前のお客様のことを第一に考えて修練する。
これが必要だと思っています。
どちらが正しくて、どちらが不正解ではなく。
どちらもバランス良く考えて反映させること。
この思考を持つことが大事だと思います。
ビジネスにおいても同じだと思います。
利益にばかり目がいき、先の未来など考えないことは、思考停止で誰かにその責任を擦りつけていることだと思います。
どちらしか出来ないと自分の可能性を狭めるのではなく、『どちらも救える方法を考える』。
マジックも自らの事業もそういう視点が必要だと思います。
他者が違う意見だからと言ってそれを否定するのではなく、受け入れてどちらもが幸せになる道を探すこと。
お互いがウィンウィンになれる世界を目指すこと。
これがビジネスにおいて重要なことだと思います。
人によってはそのウィンが『お金』ではない場合もあります。
あなた一人の考え方が正義なのではなく多くの人の考え方を包括し、一緒になって考えること。
全員の幸せを考えることが大前提で先に進みその上でデザインしていくことがこれからのビジネスモデルには必要不可欠です。
あなたはどこまで人の幸せ(自分も含め)を包括して考えていますか?
少しでもみなさまのお役に立てますように。願いをこめて。
2コメント
2018.09.18 05:39
2018.09.18 05:22